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「原発 AI 電力需要が後押し!!」

2025年7月20日(日)の日本経済新聞に「原発 AI 電力需要後押し」「関電、データ拠点新設にらむ」「脱炭素へ地元理解カギ」という題名で記事が掲載されました。関西電力が福井県の美浜原子力発電所内で原子力発電を新設する地質調査を始める予定とのことです。人工知能(AI)の拡大でデータセンターや半導体工場の建設が相次ぎ、データセンターと半導体工場に使われる電力は2034年までに14倍になる見通しです。脱炭素と両立しながら将来の電力需要を確保するには、原発の有効活用は欠かせず、関電の調査開始のあと押しになっている状況です。
電力広域的運営推進機関によると、全国のデータセンターと半導体工場向けの電力需要は、2025年度の想定の36億キロワット時から2034年度には514億キロワット時になる見通しです。NTTデータや日立製作所、GAFAをはじめとするアメリカの巨大テック企業も日本国内でのデータセンターの建設を行っています。関西地区でも大型のデータセンター建設予定が相次いでます。ソフトバンクは、シャープ堺工場の土地などの一部を1000億円で取得して、建設を進めます。関電自信も京都府精華町で「ハイパースケール」と呼ぶ大型のデータセンターの稼働準備を進めています。データセンターは二酸化炭素を排出しないクリーンな電力で賄う方針を示す企業が多く、政府も原発を「優れた安定供給性などを有し、データセンターや半導体工場の新たな需要にも合致する」と位置付けています。
関西電力の原発は、7基がすべて再稼働しています。すべての電源を占める原発の発電量の比率は、2023年度で44パーセント、火力発電が41パーセントだったのに比べて、上回ってます。このため、発電コスト面で、関西電力は優位に立ってます。ただ、高浜原発1号機は、2024年に全国で初めて50年の稼働年月を超えました。関西電力は、2050年までに全事業のCO2排出を実質ゼロにする方針です。2022年にはロシアのウクライナ侵略によるエネルギー価格高騰もあり、古くなった原発の建て替えに向けた準備が急務になってます。関西電力は、1,2号機が廃炉となる美浜原子力発電所で安全性の優れている次世代型原子力発電の新設を予定してます。関西電力の原子力発電の新設がうまく進めば、他の電力会社も原子力発電所の再活用に踏み出す契機になります。
次世代型原子力発電は、三菱重工業が手掛ける革新軽水炉です。革新軽水炉 SR-1200は、120万キロワット級の発電炉であり、「安全系設備の強化」「地震、津波など自然災害への耐性及びテロや不測事態へのセキュリティ強化」などといった安全性、信頼性向上について、福島第一原子力発電所の事故の教訓を反映した新しい規制基準を踏まえて、三菱重工が開発してます。新たな安全メカニズムとして、プラントの状態に応じて自動作動する設備である高性能蓄圧タンクや世界最新技術の溶融炉心対策であるコアキャッチ(溶融デブリを容器内で確実に保持・冷却する設備)を設置します。さらに万一の重大事故時に放出される放射能量を低減し、影響を発電所敷地内に留めるためのシステム設計にも取り組むとのことです。また、「再生可能エネルギーなどの他電源の電力量の変化に柔軟に対応可能な運用性向上」や「水素製造への適応化」も検討しています。
三菱重工は、これまで国内で24基の加圧水型軽水炉の原子力発電を国内に建設し、保守に関わってきいます。関西電力の美浜1号~3号、高浜1号~4号、大飯1号~4号、四国電力の伊方1号~3号、九州電力の玄海1号~4号、川内1号2号、日本原子力発電の敦賀2号、北海道電力の泊1号~3号になります。
因みに私の古巣の日立製作所は、東北電力や中国電力に沸騰水型軽水炉を納入してます。福島第一原子力発電所で事故を起こした原発の型は、沸騰水型軽水炉です。そのため、同じ型の沸騰水型軽水炉の再稼働の審査が厳しく、現在、再稼働している原子力発電所は、ほとんど加圧型軽水炉です。先日、再稼働した東北の女川原子力発電所は、日立製作所が納入した沸騰水型軽水炉です。
関西電力の今回の発表により、今後は再稼働ではなく、新設の原子力発電にて、日本のベースロード電源の1部を賄うという方向性になりそうです。現在開発中のペロブスカイト型太陽光発電の普及もあと、2,3年したら進むと思います。是非とも、再生可能エネルギーとの共存ができる原子力発電を目指してほしいと思ってます。電気を使うところで発電するのが、ロスがなくて、一番効率的です。未来のエネルギーについて、皆さん考えましょう。